切ないほど、愛おしい

「俺の両親は20年前に亡くなったんだ。俺がまだ小学生の時。その半年ほど前におやじの会社が倒産して、やっと事後処理が終わってまた一からやり直そうって時におやじは交通事故で亡くなった。周りの人間は、元々金持ちの息子として温々と育ったおやじが会社を失い失意の果てに自殺したと言ったけれど、俺は違うと思った。でも、誰も聞いてはくれなかった。おやじの親友だった社長以外は」

「社長さんはお父様の親友だったの?」

「ああ。家族ぐるみの付き合いでかわいがってもらった。おやじが亡くなって半年後にお袋が亡くなったときには、ひとりぼっちになった俺を引き取ってくれたんだ」

「へー、親戚でもないのに凄いわね」

「そうだな。当時、おやじの実家もお袋の実家も代替わりしていて俺が行っても肩身が狭いだろうと思ったんだろう。実際、会社がつぶれて自殺したと思われていたから、歓迎はされていなかったし。俺は社長の家で、中学卒業まで実の子同様大事に育ててもらったんだよ」

「ふーん。社長さんって素敵な方ね」

「ああ、厳しいけれどいい人だ」

私だって人並み以上に苦労はしてきているつもりだけれど、徹さんも大変だったのね。
そう思うと、少しだけ見方が違ってきた。

「ほら、冷めないうちに食べるよ」
「うん」

運ばれてきた朝食を食べながら、私は香山徹という人に興味を持ち始めていた。