切ないほど、愛おしい

「サラリーマンの俺が、こんな所に通っているのが意外?」
「え?」

図星をつかれ、返事に困った。
確かにここは、普通の会社員には縁のない場所に思える。
大体、高級マンションも外車も、かなりの収入か資産が無ければもてるものではない。

「実は、俺の両親が資産家の娘と息子でね。俺は2人の遺産と保険金を全部相続したんだ」

「だから、お金持ちなのね」

やっと腑に落ちた。

「だけど、俺は普通だよ。生活は自分の給料でまかなっているし、贅沢をしているつもりも無い。マンションはおやじの実家の建物だし、車は昔からの付き合いで断れなくて乗っている。この店は社長に連れてこられてから気に入って、会員になったんだ」

俺は普通だと一生懸命説明する徹さんがかわいい。
もっとお金持ちを自慢すればいいのに。
そうしないところが徹さんらしいけれど。

「徹さんは社長さんにかわいがられているのね」

この歳で社長秘書なんてよほど信頼されているんだろうし。
少しの間だけれど仕事ぶりを垣間見て、評価され信頼されているんだなあと感じた。

「社長は、俺の命の恩人。父親みたいな存在だから」

「命の恩人?」
予想もしなかった言葉に、聞き返した。