切ないほど、愛おしい

しばらくの間、彼女は俺に頭をもたげて泣いた。
我慢していた思いが溢れ出るように肩を振るわせ続けた。

トントントン。
そっと背中を叩いてやると、少しずつ嗚咽が止っていく。

「病院から着けてきたんですか?」
顔を上げた彼女が聞いてきた。

病院で見かけて同情してついてきたお節介野郎とでも思ったらしい。

そうだよな。
普通そう思うよな。
俺は彼女を知っていても、彼女にとっては通りすがりの知らない男。
怪しんで当然だ。

「同情ですか?」
「かもね」

わざわざ素性を明かすことも無いだろうし、彼女だって陣には知られたくないだろうから曖昧に返事をして誤魔化した。


「大変な仕事だな」

仕事なんてみんなつらい物だろうが、医者って仕事はここまでしないといけないんだな。
そう思うと、かわいそうになってしまう。

「お願い、優しくしないで」
やっと泣き止んだ彼女が、またウルウルしだした。

「バカ。こんな時は黙って甘えてろ」

「・・・うん」

ずっと強がっていた彼女から初めて聞いた素直な言葉にホッとした。
次の瞬間、

「ウゥゥ」
体を硬くして苦しそうな表情になった。

「どうした?大丈夫?」

「く、苦しい」
よほどつらいのか、額には汗をかき、俺の手をギュッとつかんでいる。

これはただ事では無い。
幸いここは病院の敷地内。
俺は彼女を抱き上げ救急外来へ戻ろうとした。

しかし、

「待って」

彼女が俺を止めた。