切ないほど、愛おしい

いきなり大勢の人の前で詰め寄られ、きっと動揺しているはずの彼女。
本当ならすぐにでも泣き出したい所なんだろうが、表情を崩すこともなく建物を出た。

強い子だな。
そんな思いで、俺は後をついて行った。


車に乗るのか、駅に向かうのか、どちらにしても病院の敷地を出たら後を追うのをやめようと思っていた。
しかし、車に乗り込むわけでもバス停に向かうわけでもなく、病院内の小さな公園を訪れた彼女。

ベンチに座り、肩を落とし、天を仰ぐ。

はあぁー。
大きくついた溜息がこちらにも聞こえてくるようだ。

1つ、2つ、大きく息を吐くと、カバンから小さなポーチを取り出して、ゴソゴソとあさり出す。

出てきたのはたばことライター。
華奢で清楚な印象の彼女には似つかわしくない物の登場に少し驚いた。

取り出したたばこを1本くわえ、ライターで火を付ける。
フーと煙を吐いた瞬間、

「ゴホゴホ」
彼女が咳き込んだ。

それでももう一度吸い込み、空に向かって煙を吐く。
その姿が痛々しくて、

「敷地内禁煙」

思わず声をかけてしまった。