次に目が覚めたときに見えたのは病院の天井。
いくつもの管に繋がれ、耳ざわりな機械音が気持ち悪かった。

「気がついたんだね?」
優しそうな男性に声を掛けられ、
コクンと頷く。

「少し疲れが溜ったんだ。ゆっくり休めば良くなるから」
頭をポンポンとして言われ、なぜかその言葉にホッとした。

母さんも、私と同じで心臓が弱かった。
薬も飲んでいたし、寝込むことも時々あった。
だから私も、このまま死ぬんではないかと不安だった。
でも、

「大丈夫だよ。無理せずにちゃんと付き合っていけば、君は大丈夫だから。いいね?」
「はい」

この時出会った先生が、私の主治医。
その日から、私とこの病院の付き合いが始まった。

高校生になり、大学生になり、時間がなくてなかなか定期的には来られなくはなったけれど、それでも付き合いは続いている。
それどころか、今ここは私の職場でもある。


「お大事に」
「ありがとうございます」

薬手帳と領収書を受け取り、私は時間外入口に向かった。


今私がいるここは大学の付属病院。
本当なら午前中しか外来をしていないけれど、忙しい私にそんな受診ができるわけもなく、無理を言って薬だけ出してもらっている。
主治医とも10年来の付き合いだし、院内で働くスタッフと言うことで融通を利かせてくれているんだと思う。