そんな私がこの病院へ初めて受診したのは、母さんが死んだ後だった。
それは・・・中学1年の時。


物心つく前に両親が離婚していた私は母さんに育てられた。
7歳年上のお兄ちゃんはすでに家を出ていて滅多に帰ってくることもなかったし、貧しかったし、寂しかった。でも、幸せだった。
いつも優しい母さんが大好きだった。
それなのに・・・
私を育てるために必死に働いていた母さんが、仕事中に倒れそのまま亡くなってしまった。
元々心臓が弱かったし、無理もたたったのだろうと思うけれど、私は自分のせいで母さんが死んでしまったような気になった。
私がいなければ、母さんは死ななかったのかもしれない。そんな風に思った。
昨日まで元気にしていた母さんが突然消えていなくなり、現実を受け入れられない私は心を閉ざした。

「乃恵、大丈夫か?」
唯一の身内であるお兄ちゃんが、何度も声を掛けてくれたのに、
「大丈夫」
私は同じ答えを繰り返した。

自分でも、どこがどう具合が悪いのかさえわからなかった。

そして、母さんが亡くなって1ヶ月ほど過ぎた頃。
納骨が終わってやっと一息ついたとき、私は倒れた。

「乃恵ーっ」

遠くの方で、悲鳴のような声だけが聞こえていた。