切ないほど、愛おしい

「大体、もう一晩くらいソファーで寝たってどうってことはないんだ」

高級マンションの廊下には不釣り合いなくらいの大きな包みを恨めしそうに見ている。

「でも、それじゃあ体が休まらないでしょ?」

昨日だってソファーで寝たんだし、今日はちゃんと布団で寝ないと。
平気な顔はしていても、社長秘書なんて激務に決まっているんだから。

「あのソファーは広いし、スプリングも効いていて寝やすいんだ。俺は十分眠れている」

強がりなのか本気なのか、徹さんは私が買った布団のセットが気に入らないらしい。

「あの、重かったら私が持ちますよ」

荷物を持たせてしまったことが不満なのかと、自分の持ってた荷物を置いて手を伸ばそうとすると、

徹さんは布団の包みを抱えたまま1人で歩いて行ってしまう。

「ちょ、ちょっと、待って」

私も駆け足で後を追った。


私が布団を買ったのは、今日寝るための寝具がなかったからだけの理由ではない。

今まで過ごしていた自分の部屋に誰かが侵入したと聞かされ、恐怖と同時に嫌悪を覚えた。
たとえ引っ越したとしても、誰が触ったのかもしれない布団なんて気持ち悪くてもう使えない。
だから、新しくアパートを借りたらこの布団も持っていくつもりで購入した。

大きな荷物を運ぶことになった徹さんには申し訳ないと思うけれど、私は新しい布団が欲しかった。