タクシーに乗り、私のアパートへ。

築年数こそ新しいけれど、広くもおしゃれでもない部屋。
繁華街の片隅にあって、間違っても閑静とは言えない場所。
なぜこんな所に住むことにしたかというと、すべては家賃のため。
お兄ちゃんにお金を出してもらって大学に通っていた私にとって、家賃を押さえることが第一条件だったから。

「ここ?」
ちょっと呆れたように、徹さんがアパートを見ている。

「ええ、まあ」

さすがに少し恥ずかしいけれど、ここが我が家。

「2階だな?」
「うん」

外階段を上がり部屋へと向かった徹さんを、私も追った。

このアパートに住んで6年。
大学に入った時からの長い付き合いになる。
2年ほど前からルームシェアを初めてそれなりに楽しく暮らしてきた。
私はここが嫌いではなかった。
でも・・・


ドン。
「痛っ」

急に立ち止まった徹さんの背中にぶつかった。

ん?

のぞき込んでみると、

「・・・嘘」

私の部屋の前は真っ赤なペンキが撒かれている。

手すりや廊下にも何枚もの張り紙が貼られ、散々たる光景。

「酷いな」
呆れた徹さんの声。

「・・・」
自分のせいでもないのに恥ずかしくて、目をそらしてしまった。