切ないほど、愛おしい

「あいつのことだから、きっと何も言わないんだろうな」
ボソリと漏れた徹さんの言葉。

「どういう意味?」
なんだか含みを感じてしまって、聞き返した。

小さい頃から別々に暮らしていたし、母さんが亡くなってからも私は学校の寮に入ったから一緒に暮らした記憶はない。
お兄ちゃんのことを何も知らないと言われてしまえば、否定はできない。

「いいか、よく聞けよ」
と、少しだけ真面目な顔をして徹さんが私に向き直った。


「俺と陣は定時制の高校に行っていた。当然、みんな働きながら勉強していたけれど、その中でも陣は特別だった。昼閒は会社に勤めながら、夜にはバイトをいくつも掛け持ちして寝る間を惜しんで働いていたんだ。何のためだと思う?」
「それは・・・」

答えはわかっている。
きっとお兄ちゃんは、

「お前とお袋さんのためだろ?」
「・・・ぅん」

間違いない。
私はずっとお兄ちゃんに守られてきた。

「あいつはいつも、家族のために一生懸命だったんだよ」

その言葉に深い意味があったのかどうかはわからないけれど、少なくとも私の心には響いた。
だから、

「感謝してます」
ためらうことなく口から出た。