「なあ」
「ん?」

息のかかりそうな距離で呼ばれ、顔を上げる。

「今朝、麗子が電話してきた」
「麗子さんが?」
「ああ」

やっぱり麗子さんと徹は仲がいいのね。

「それで?」
無意識のうちに不機嫌が表情に出た。

「昨日は自分が飲み過ぎただけで乃恵は一口も飲んでないし、会社の同僚に誘われて断れなかっただけだから怒らないでくれって」
「へー」

麗子さんらしいな。
嫉妬心を出してしまった自分が恥ずかしい。

ククク。
なぜが突然徹が笑い出した。

「何よ」
不機嫌になった私を子供みたいだって笑う気かしら。

「麗子の奴すげえ声が枯れててさ、ひどいんだ」
「えっ」
それって・・・

「そんな状態なのに、朝っぱらから俺に電話してきたんだぞ」
「・・・」

きっと、それは、昨日の夜、
それ以上は想像しないでおこう。

「今夜は俺たちも、な?」
「う、うん」

その夜、私たちはいつも以上に仲良くなった。



* Fin *