「オイッ」

グラスを奪い、ペシッと私のおでこを叩いたお兄ちゃん。

「痛っ」
そんなに痛いわけではないけれど、とっさに口を出た。


大体、もう24になる妹がちょっとワインを飲んだくらいで騒ぎすぎ。
いくら心臓が悪くても、ワイン一杯で死にはしないのに。
そこのところが、お兄ちゃんにはわかっていない。

「もう飲むなよ。飲むならこのまま連れて帰るぞ」

「・・・」

本当にもう、まるで中学生扱いじゃない。
この人は私の歳を理解しているんだろうか?
私が30になってもずっとこのままだったりして・・・怖。

「ボーッとしてないで、好きな物頼め。何でもおごってやるから」

あら、ご機嫌。

私のお兄ちゃん、長谷川陣(はせがわじん)は31歳。
身長180センチ。細いけれど筋肉質で、いわゆる細マッチョ。
顔は強面で、少し怖い。
それなりにもてるみたいだけれど、素人受けする顔ではないかも。

「お兄ちゃん、いい加減彼女とかいないの?」

妹としては純粋に心配して言ったつもりなのに、

「俺はいい。お前を一人前にするまではそれどころじゃないからな」

ハアー。
これもいつもの回答。