切ないほど、愛おしい

さすがにこの状況で、徹が怒っているのは理解できた。

こんな時は余計なことを言わないのが一番なのもわかっている。
お互いに何の言葉も発せないまま、車はマンションへ向かって行った。


20分ほど走って到着したマンション。
エレベーターに乗って部屋まで帰り、リビングに入るまで徹は私の腕をつかんだまま。
もしかして私が逃げるとでも思っているのかしら。
チラッとそんなことを考えたけれど、当然口には出さなかった。


「今までどこにいた?」

リビングのソファーに座り、やっと出てきた言葉。

「えっと、さっきの産院にいました」
「なんで?」

なんでって、
「たまたまコーヒーショップで一緒になった紗耶香さん、紗耶香さんてさっき産院で出産した妊婦さんなんだけれど、その紗耶香さんが破水して、旦那さんに連絡がつかなくて、一人にできなくて産院までついて行ってしまったの」

悪いことをしたつもりはないからはっきりと答えたけれど、徹の顔は怖いまま。
これは相当怒っている。