切ないほど、愛おしい

その日の夕方。

夜にならないとご主人も来られないとのことで、帰るタイミングを逃してしまった私は陽菜ちゃんと一緒に助産院にいた。

生まれた赤ちゃんもとっても元気で、紗耶香さんもうれしそう。

ただ気がかりは、私の受診予約をすっぽかしてしまったこと。
途中で連絡を入れようとも思ったけれど、携帯を充電したまま忘れてきてしまい電話ができなかった。
もしかして、山神先生が心配しているかなあと頭をかすめた。
でもまあ行けなかったものは仕方ないし、明日にでも電話して予約を取り直して、先生には受診の時に謝ろう。
抱っこされたまま眠ってしまった陽菜ちゃんを膝にそんなことを考えていると、

「ごめんください」
なぜか耳なじみのある声が聞こえてきた。

ん?

「ああ先生、わざわざすみません」
「いえいえ、かまいませんよ」

え、待って、この声は、

「こんにちは」

ドアが開いて入ってきた人を見て、私は固まった。