切ないほど、愛おしい

楽しく3人でお茶を飲み、小一時間を過ごした。

「そろそろ行きますね」
私が立ち上がると、
「じゃあ、私たちも、」
紗耶香さんも席を立った。

その時、

「あぁっ」
小さな声で言い、しゃがみこんだ紗耶香さん。

「どうしたんですか?」

「破水、したみたい」

「えぇ?」
それは、大変。

「大丈夫です、すぐに病院と主人に連絡しますから」
「そうしてください。私が陽菜ちゃんを見ていますから」

カバンから携帯を取り出し病院に連絡を取る紗耶香さん。
私は陽菜ちゃんを抱いていることしかできない。

「わかりました。今から向かいます」
そういって電話を切ると、今度は別のところに電話しているみたいだけれど繋がらない様子。

「どうやら主人には連絡が付きませんが、タクシーで産院へ向かいますので」
「向かいますのでって、一人では無理でしょ?陽菜ちゃんはどうするんですか?」
「連れていきます。小さな産院で、遊ばせておくスペースもあるので」
そんな・・・

お産の間陽菜ちゃんを一人にしておくことなんでできるわけがない。
それに、ここから産院までだって一人では無理でしょう。

「いいですよ。産院まで一緒に行きましょう」
「そんなご迷惑はかけられません」
「いいから行きましょう。陽菜ちゃんと荷物は私が持ちますから、場所を教えてください」

遠慮する紗耶香さんの腕を引き、私たち3人は店の前で捕まえたタクシーに乗り込んだ。