徹の付き添いのお陰か、意識を取り戻した後の私は周囲が驚くほどの回復を見せた。

何の後遺症も残っていないのはもちろん、1週間ほどで歩行も可能になり、10日後には産科病棟に顔を出しに行けるまでになった。

さすがにここまで大きな発作を起こしたからにはすぐに職場復帰というわけにはいかず、私は来年春までの休職扱い。

研修医である以上休職すればそれだけ研修期間は伸びるわけで、多少の焦りを感じないと言えば嘘になる。
でも今の私は、それも仕方がないことと穏やかに受け入れる気持ちになれる。
それはきっと、徹がいてくれるから。


「なあ、他に準備するものは本当にないのか?」

1人窓の外を眺めていた私に、徹が声をかける。

「うん。大丈夫。もし必要になればその時言うから」

もう、どうして徹はこんなに心配性なんだろう。
後で私がするといっても一切聞かず、一人で荷物の整理を始めているし。


検査結果も体調もすこぶる良好な私は、目覚めてから2週間後の明日退院の日を迎える。

あまりにも急な展開で帰る家の準備をどうしようかと慌てたお兄ちゃんに、
「僕の家に連れて帰ります」と、徹が宣言。
当然反対するんだろうと持っていたお兄ちゃんは何も言わず、私は徹のマンションへ帰ることになった。