切ないほど、愛おしい

「お兄ちゃん」

「ん?」

ゆっくりと手を取り、私を見るお兄ちゃん。

私は両手を広げてお兄ちゃんにハグをした。


「心配かけて、ごめんね」

徹さんと逃げてしまったことも含めて、ちゃんと謝りたかった。

「戻って来てくれて、よかった」
いつもとは違う小さな声。

「うん、戻って来たよ」

「あのまま乃恵がいなくなったら、俺は生きていられなかった」
「お兄ちゃん」

初めて見る弱り切ったお兄ちゃんに戸惑った。
いつだってお兄ちゃんは強くて、弱ったところなんて見せないのに。

「陣はね、自分のせいで乃恵ちゃんが倒れたんだと思っているの。自分が乃恵ちゃんを追い詰めてしまったんだってね」
多くを語らないお兄ちゃんに代わって、麗子さんが説明してくれた。

「えっ、それは、違うよ」

逃げたしたのは私で、だれの責任でもない。


「もう二度と、居なくなるな」
私を抱きしめる腕に力を込めて、絞り出すような声。

「うん、ごめんね」
私もお兄ちゃんを抱きしめた。