切ないほど、愛おしい

なんでだろう。
いつもなら真っ先に駆け寄るお兄ちゃんが、病室の入り口から私を見ている。

「お兄ちゃん」
呼んだきり、私のほうが泣きそうになった。

だって、あのまま目覚めなかったら二度とお兄ちゃんに会えないところだった。
今まで何度か発作を起こした時、目覚めた私が真っ先に見たのはお兄ちゃん顔。
心配そうな、怒ったような、不安そうな顔で私を迎えてくれた。
でも今は、遠慮気味に距離をとったまま。

「大丈夫か?」

少し私に近づいてから、また歩みを止めたお兄ちゃん。
なんだかいつもよりも他人行儀な気がする。

「どう、したの?」
そう聞いてしまうほど、いつもお兄ちゃんとは違う。

「いや、どうもしない」

嘘だ。
お兄ちゃん、おかしいもの。

すごくよそよそしくて、お兄ちゃんじゃないみたい。

「陣ほら、乃恵ちゃんが心配するでしょ」

強引に手を引いて、麗子さんがお兄ちゃんとベットの横まで連れてきた。

「やめろよ」

照れくさそうに麗子さんの腕を払おうとするお兄ちゃんに、私は手を伸ばした。