切ないほど、愛おしい

はじめは陣が来たのかと思った。
しかし、いつも遅い時間に来る陣にしては登場が早くておかしい。

じゃあ、麗子?
いや、今朝来たばかりだからそれもない。

きっと、乃恵の同僚が顔を見に来てくれたんだろう。
なんだかんだ言って、みんな乃恵のことを心配しているんだ。

「はい」

部屋の入り口まで行った俺が手をかけるのと、廊下側からドアを開けるのが同じタイミングになった。

「おじゃまします」

それは俺のよく知る声。

嘘、だろ。
なんで・・・

病室に入ってきたのは社長だった。

「ああ、鈴木さん。こんにちは」
どうやら知り合いらしい山神先生が挨拶を交わし病室を出てく。

結局、俺と社長の2人が乃恵の病室に残されてしまった。

「少し話せるか?」
病室に置かれたソファーに腰かけ俺を見る社長。

「はい」
断る理由のない俺は、向かい合って腰を下ろした。