切ないほど、愛おしい

「どうです?」
俺の顔を覗き込む山神先生。

「同じです」
素直に認めた。

「僕もね、いろいろ言われるんですよ。家内は有名人だし、破天荒な恋多き女だそうですからね。娘も母親に似てわがままで、僕と10歳ほどしか年が変わらないんです」
「へえー」

確か奥さんは3度目の結婚で、年も随分上だったはず。
娘さんは前の旦那さんとの子ってわけだ。

「でもね、僕は家内と娘を愛しています。二人の良さは僕だけが知っていればいいんです」
「そうですね」

「すみません、説教臭くなりましたね。どうぞコーヒーのお代わりを」

席を立ちコーヒーのお代わりを継いでくれる山神先生。

「ありがとうございます.」

「たとえこのコーヒーでカフェオレを作ってしまうような女でも、僕にとって大切な人です」
「ええ」

たとえベットの上で眠ったままでも、俺にとって乃恵はかけがえのない人。

「先生、ごちそうさまでした」
「いえ、お粗末様でした。ああ、そうだ。これ、よかったら持って行ってください」

紙袋いっぱいに詰まった本を差し出された。

不思議なことに、俺と山神先生は音楽や本、食べ物の好みが凄く似ていた。

「家にあったものですが、時間つぶしにはなると思います」
「ありがとうございます」