切ないほど、愛おしい

微睡の中、それでも私は生きている。

今は何も見えず、何も感じない。
ただ、私を呼ぶ声だけが聞こえてくる。

「乃恵、今日はとってもいい天気だぞ」
耳元でささやく徹さん。

「乃恵が目覚めたら、一緒に散歩に行こう。ゆっくりでいいから落ち葉を踏みしめて二人で歩こう。おしゃれなカフェなんて俺の柄じゃあないけれど、乃恵と一緒なら入ってみたい」

そうね。徹とお散歩、私もしたい。

「冬になったらこたつを出して、ゆっくり過ごそう。そうだ、高校の頃陣たちと通った焼き芋屋が凄く旨いんだ。俺が買ってくるから、一緒に食べよう」

焼き芋かあ、そういえば子供のころお兄ちゃんと食べた記憶がある。

「春になったら、花見だな。仕事柄都内の桜スポットはたいてい把握しているから、最高の花見に連れて行ってやる」

お花見、行きたい。
その時は私がお弁当を作るわ。

「夏になったら、花火を見に行こう。海もいいなあ、乃恵はプールのほうが好きかなあ?それに、山へ行きたい」

山?

「俺、大学時代ワンゲル部にいたんだ。夏のキャンプはいいぞ、いつか乃恵と二人で行きたいな」

アウトドアなんて、徹のイメージとずいぶん違う。
でも、いいな。行ってみたい。