切ないほど、愛おしい

それからは本当に時間が長く感じた。

救急外来の処置室で治療を受ける乃恵を俺は待合に座って待つことしか出来ず、悶々と過ごすしかなかった。
時々診察室から出てくるスタッフにどうなっているんですかと聞こうとしたが、さすがに出来なかった。


そんな中、1時間ほどで陣が到着。

「すみません、長谷川乃恵の兄です」
息を切らして受付に駆け寄る。

「おい」
俺は陣の背に立った。

「ぉ、お前」

グイッと襟首を締め上げ俺を睨む陣を、俺は止めることもしなかった。

バンッ。

力一杯、陣は俺の頬を殴りつける。

「ふざけるなよ、何で乃恵が倒れるんだっ。あれだけ、あれだけ近づくなって言ったじゃないか」

とても病院の中となおもえないほど大声で怒鳴る陣に、俺はただ頭を下げるしかない。

「絶対に許さない」
そう言ってもう一度上げた拳を、駆けつけた警備員が押さえている。

別に、何発でも殴られる覚悟は出来ている。
それだけのことを俺はしたんだ。

「ここは病院です。どうか落ち着いてください」
診察室から出てきた白衣の男性が、陣と俺の間に入った。