切ないほど、愛おしい

見合いの席から逃出して郊外の温泉宿へ隠れた俺たちは、お互いの気持ちも通じて、幸せの絶頂を感じていた。
俺自身今までに何人かの女性と付き合ったことはあったが、こんなに衝動的に愛した人は初めてだった。
このまま乃恵さえいてくれればそれでいいと、本気で思っていた。


逃出して3日目後。
その日も1日ほぼベットの中にいた俺たちは、のんびりと時間を過ごした。
あと数日すれば東京に帰ろうと俺も考えていた。

夕方になって乃恵が携帯を持って部屋を出て行ったのに気づいてはいたが、きっと連絡をしたい相手もあるだろうと気にも留めなかった。

30分。

1時間。

ウトウトとしながら、さすがに乃恵の帰りが遅くて気になってきた。

普段はとても元気な乃恵だが、心臓に持病があり時々発作も起す。
油断すれば命に関わることもあるんだと、陣からも聞かされている。

不安になった俺は、乃恵の姿を探して部屋の外へと出た。