この時の私は普段と違っていた。

まず、飲み続けるはずの薬を丸1日以上飲んでいなかった。
体調に異変はなかったものの、数日間寝不足が続いていたのも事実だし、色々と体を酷使もした。
もちろんこれは自分の意志であって、徹さんに無理強いされたものではない。
そして、体以上に心が弱っていた。
徹さんを思う気持ちも、徹さんが思ってくれていることも承知の上で、私と一緒にいることで徹さんの未来が閉ざされるかもしれないと知ってしまった。
どうしようもない現実を突きつけられ、無意識のうちに生きたいという気持ちが薄れていた。


あと20メートル。

・・・10メートル。

強くなる一方の雨脚に、私もスピードを上げた。


その時、

ウッ。
急に胸が苦しくなった。

イヤだ、こんなところで倒れたくはない。
そう思っても胸の痛みの息苦しさも消えることはない。

「ウ、ウウゥ」
小さなうめき声を上げて、私は意識を失いその場に崩れ落ちた。