切ないほど、愛おしい

『このまま逃げ続けるつもりか?』
「まさか」

そこまでしようとは思ってはいない。
ただ、今はもう少し2人でいたい。その思いだけ。

『病院から電話があったぞ。具合が悪いならちゃんと受診して診断書を出せって、産科部長って言っていたっけ、かなり心配しているみたいだった』
「そう」

きっと、数日前に当直をして体調を崩した話を山神先生がしたはずだから、私の電話も信じてくれたんだ。

『まさか仮病を使って、男と逃げたとは思ってないみたいだな』

うっ。
本当に、お兄ちゃんは遠慮なく痛いところを突いてくる。

『まあ、俺としては今回のことでお前が職場を変わっても何も言うつもりはない。元気に生きていてさえくれれば文句はない』
「お兄ちゃん」

てっきり叱られると持っていたのに、『生きていてくれればいい』なんて言われて少しだけ感動した。
どんな時もお兄ちゃんは私の味方なのねと、胸が熱くなりかけたとき、

『でもな、徹のことは別だ』
「へぇ?」

『なあ乃恵、お前は本当に今の状況を理解しているのか?』

えっと、それは・・・