ブブブ ブブブ。

『ハイ』

短いコールの後電話に出た声は、不機嫌全開だった。

そりゃあね、勝手に家を空けて何日も帰ってこない妹からの電話ににこやかに出ろって言う方が無理だろうけれど、

「・・・」
私の方も、かける言葉が見つからない。

『無言電話か?』
「いや、」
そうではなくて、

きっと心配をかけたんだろうと思って、無事の連絡だけでも入れるべきかと思って、

『お前がここまでバカだとは思わなかったぞ』
「え?」

『俺の妹はもう少し賢くて、事の善悪の判断もできて、人も気持ちもちゃんと理解で切る人間だと思っていたが、』
残念だよと言いたそうに声を落とすお兄ちゃん。

いつものお兄ちゃんなら怒鳴り散らすところだろうに今日はなぜか静かで、それが返って怖い。
叱る気にもならないくらい呆れさせてしまったってことかもしれないし、仕事を投げ出して逃げてしまった私に失望したのかもしれない。


「ごめんなさい」

全て納得の上で覚悟をして取った行動だから、どんな罰を受けることになっても謝らないでおこうと思っていたのに、お兄ちゃんには敵わない。