切ないほど、愛おしい

「あの子、かわいらしい子だったわね」

テーブルいっぱいに並んだ宿の朝食を前に、乃恵はにっこりと話を振ってきた。

「あの子?」

そう言われて思い浮かぶのは、昨日のお見合い相手。
それ以外に思い浮かぶ人物はいないんだが、

「ほら、昨日のお見合い相手」

やはり。
でも、今ここでその話を持ち出すか?
どちらかというと思い出したくない話題なんだが。

「そんなこと聞いて、楽しいか?」
ムッとして話を止めた。

もちろん、いつまでも避けることができる話だとは思っていない。
しばらくしたら東京に戻って、頭を下げて回ることになるだろう。
でも、今はまだ乃恵との時間を楽しみたい。
俺は、全てを投げ出してここまで来たんだから。


「いくつだったの?」
「え?」

「彼女よ。お見合いの相手。かなり若そうだったけれど、まさか高校生ってことはないわよね?」

「大学2年」

「へえー、二十歳か。若いわね」
「ああ」

いくら避けようとしても乃恵はこの話題を止める気はないらしく、俺はしかたなく付き合うことにした。