切ないほど、愛おしい

「お前、いくつになった?」

はあ?
いきなり年を聞かれ、口を開けた。

「31ですが」

そもそも、自分の息子と同い年なのは承知のはずだ。
わざわざ聞く意味がわからない。

「将来のことを考えてもいい年だな」

確かに、身を固めてもおかしくない年齢ではある。
世間一般に言う適齢期なんだとも思う。
でも、

「結婚観は人それぞれですので、人がするから右へならえで自分もしなくてはというのはおかしいと思います」
なんとかこの話題から逃げたくて抵抗してみた。

「将来のことって言うのは、結婚のことばかりじゃないぞ。どちらかというと、結婚はおまけだ」
「えっ?」
意味がわからず聞き返した。

「だから、お前もそろそろわしの元を離れる時期だなと言ったんだ」

それって、つまり、

「私を切るおつもりですか?」
衝撃のあまり、冷たい声になった。

この8年、俺は精一杯尽くしてきたつもりだ。
社長との個人的な関係に甘えることなく、常に上司と部下としての境界線を意識して仕事をしてきた。
それなりに貢献してきた自負もある。
それなのに・・・