切ないほど、愛おしい

ジッと下を向き、足元と携帯を交互に見た。

麗子さんとの約束の時間は、すでに過ぎている、
できればここを離れたいけれど、待ち合わせているからにはそうもいかず、

「困ったな」

運ばれてきた2杯目のコーヒーを一口飲み込んで、フーと息を吐いた。
あと10分待って麗子さんが来なければ、ここを出ようと思っていた時、

「あの、徹さん。どうかなさったんですか?」
お見合い中の女性の訝しむ声。

ん?

その声に反応するように、私は顔を上げた。

「ぅ、そ」

そこには真っ直ぐに向けられた視線。
怒っているかのような強い眼差し。
それは、会いたくて会いたくてたまらなかった人。

彼はジッと私を見つめたまま、少しだけ表情を緩めた。

「の、え」
唇だけが小さく動いた。

「徹」
誰にも聞こえない声で、彼を呼ぶ。

ほんのわずかに、彼の口角があがったことに気づいたのはきっと私だけ。
私はにっこりと微笑みかけた。