切ないほど、愛おしい

それからしばらく、楽しそうにお茶をする席を眺めていた。

華子さんと呼ばれた女性は、緊張する様子も見せずに、
「趣味は乗馬で、休日は友達と買い物に出かけることが多いんです。徹さんご趣味は?」
と質問をする。
それに対して、「仕事が忙しくて、なかなか休日が取れないんです」と返事をする徹さん。
「それはいけませんね」と言いながら、華子さんはパクパクとッケーキを食べて見せる。

この時点で、私は背中を向けた男性が徹さんだと確信を持った。
だからこそ余計にことの成り行きが気になって、動けなかった。

徹さんがお見合いをしようと、誰と付き合おうと、私に止める権利はない。
私達はきっと、友人ですらないんだから。
でも、気持ちがザワザワする。

いつのまにか、私は徹さんの背中を睨み付けていた。
もしも私達の出会いが運命だったなら、徹さんは振り向いてくれるかもしれない。
何の根拠もなくそんなことを思った。

お願いこっちを向いて。
私を見て。
念にも似たものをぶつけた。

その時、

「あの、お客様?」
耳元から聞こえたホテルマンの声。

「はい」

「お水が、」

「あ、ああぁぁ」
気付かないうちにコップを傾けてしまっていたらしい。