切ないほど、愛おしい

その後どんな話をしたのか、どうやってその場をはなれたのか私には記憶がない。

気がついたら病院の屋上へ来ていた。

はあぁー。
手すりにもたれかかり、ため息をつく。

このままここから身を投げれば、すべてが終わる。
辛いことも悲しいことも、消えてなくなる。
でも、

「そんなことができるなら、もっと楽に生きられたのに」

フフフ。
場違いに笑いがでた。

その時、

「乃恵ちゃん?.」

不意に声がかかり、動きが止った。
この声には聞き覚えがある。
こんなタイミングで会いたくなかったけれど・・・

「乃恵ちゃんだよね?」
なかなか動かない私をもう一度呼ぶ声。

「はい」

今さら逃げることもできず、私は振り向いた。

そこにいたのは相変わらず美しい麗子さん。
身なりはいかにも仕事帰りなのに、整った顔立ちと凜とした立ち姿はやはりカッコイイ。
ちょうど麗子さんの後方から夕日が差して、私はまぶしくて目を閉じた。

「元気そうで、安心したわ。心配したのよ」

なぜだろう。
まぶしくて閉じたはずの目から涙が溢れる。

イヤだ。
涙なんて流したくない。
私はそんなに弱くないのに・・・

ボロボロと流れる涙を隠すこともできず、麗子さんの前で泣き崩れてしまった。