切ないほど、愛おしい

「もっと仕事をセーブして、恋愛して結婚して家庭を持つとか考えないの?」

うなだれてしまった私に、いつもの声に戻った山神先生。

「考えないですね」

今は仕事で精一杯。
いつか結婚して子供を持ちたいとは思うけれど、まだまだ先のこと。

「今の仕事もかなりハードだけれど、出産となればさらに大変だからね」
「え?」

突然『出産』なんてワードが出てきて驚いた。

「折を見ていつか言おうと思っていたんだが、はっきり言わなければ分かってくれないようだから言わせてもらう。乃恵ちゃんの体では、出産は厳しいと思う」
「そんな・・・」

もちろん私だって、かなりリスクが高いことは分かっている。
でも私は元気だし、いざとなれば出産くらい

「少なくとも、僕は許可しない」

許可?
そもそも子供を産むのに許可なんて、

「それに、こんなハイリスクな出産を受け入れる病院なんて、ないと思うよ」
「・・・」

目の前に、ザーっと、砂嵐が見えた。
まるで死を宣告されたような気分になった。

どれだけ頑張ってもまともに働くことができない医者。
たとえ結婚しても子供を産むこともできない女。
ましてやその寿命さえ、人よりも短いかもしれない。
こんな私に生きている意味があるんだろうか?

この時、私は生まれて初めて、この世から消えてなくなりたいと思った。