切ないほど、愛おしい

「うぅーん」

聴診の後部屋の照明を落とし心エコーを始めた先生の声が少し険しくなった。

あれ、もしかしてよくないのかな?
不安になって画面を覗き込む。

「乃恵ちゃん」
「はい」

何か言いたそうな口調で呼ばれ、緊張気味に返事をした。

「無理をしていない?」
「え?」

「勤務がキツいんじゃないの?」
「いいえ、そんなこと」

病気による制約のために思うように働けなくてもどかしいこともあるし、厳しいことを言われて泣きそうになるときもあるけれど、私はこの仕事が好きだし誇りに思っている。
落ち込んで逃出したくなることはあっても、辞めてしまいたいと思ったことはない。

「さっき、ここに入ってきたときに顔色が悪いなって気になっていたんだ。ちゃんと寝てる?食べてる?」

「ええ、今日はたまたま食べ損ねましたけれど、いつもは3食きちんと食べるようにしていますし、」

「たまたまって、最後の食事は?」

「えっと・・・」
ちょっと考えてから、口をつぐんだ。

私の最終の食事は昨日の夜食。
夜中の1時過ぎにカップラーメンを食べたのが最後だ。
さすがにこれは言えない。

「じゃあ、睡眠時間は?」

「えぇっと、昨日はカルテ整理と診断書の作成が手こずってしまって・・・仮眠室には行かずに医局のソファーでウトウトと、」
アッ。
マズイ。

「・・・」

「・・・」

薄暗い処置室で、無言の時間が流れる。