切ないほど、愛おしい

「乃恵ちゃん、いらっしゃい。どうぞ」

机に向かって何か作業中だった山神先生は、私の方を向いてにっこりと笑ってくれた。

「すみません、時間外に」

本当なら救急外来で救命の先生に診察してもらうのが本来の手順なのに、また山神先生に甘えてしまった。

「いいよ、乃恵ちゃんのことは僕が一番分かっているんだから。それに、救急に行ってもそのうち僕が呼ばれると思うよ」
「まあ、確かに」

そもそも、高校生になった時点で小児科から循環器科に転科するのが普通。
二十歳を過ぎてまで、小児科の先生に診てもらっている私がおかしいのだ。
もちろん、病状や家庭環境のせいもあって山神先生が「もう少し僕が診ます」と言ってくれたからでもあるし、私も「高校を卒業するまで」「大学を卒業するまで」とズルズルと引き延ばしてしまった。

「じゃあ、始めるよ」
「はい」

かわいいウサギさんや熊さんのぬいぐるみが置かれたベットに横たわり、診察を受けることになった。