切ないほど、愛おしい

その日病棟勤務だった私は、回診をしたり、入院中の患者の対応に追われたり、救急外来からの呼び出しを受けたりと、かなり忙しく過ごした。
朝ご飯代わりにコーヒーとチョコを口にしただけで昼も食べ損ねてしまい、ゆっくり腰を下ろす時間もないほど働いた。
午後になり、動く度に息があがるのを感じていた。

マズイな。
そう自覚したのは午後4時を回り、後少しで勤務が終わると気持ちが緩んだ瞬間。

ああぁ。
いきなり目眩がして、
ガタンッ。
近くのカートに手をついた。

「大丈夫?」
雪菜ちゃんが、駆け寄ってきた。

「うん、大丈夫」

ごめんねと笑って見せたけれど、雪菜ちゃんの表情は堅いまま。

「乃恵」
少し距離を詰め、小声で私を呼ぶ雪菜ちゃん。

「分かっている」

ここで無理をすれば前回の二の前になる。
たとえ症状が軽くても受診をする。
それが人の命を預かる仕事をする者の責任だから。

心配そうな顔の雪菜ちゃんに向かって小さく頷くと、私はPHSをとりだした。

この時間の外来はすでに終わっているはずだから、受診するとすれば救急外来しかない。
でもまずは、

ピピピピ。
何度もかけなれた山神先生の番号をコールした。