切ないほど、愛おしい

予想通りその日の夜勤帯は急患もなく、病棟から数回呼び出されただけで落ち着いていた。

しかし、この時私はちょっとしたミスを犯した。
本当なら、こんな暇な時は仮眠を取るべきだった。
何しろ前日の朝8時から夕方までの日勤後に当直に入りそのまま翌朝から夕方まで時間にすれば1日半の連続勤務。
当直の時には仮眠を取らないと体が持つはずもない。
分かっていたはずなのに、私は溜っていた事務作業に時間を使ってしまった。


「長谷川、当直に入ったの?」
朝病棟で顔を合わせた馬場先生が眉間に皺を寄せた。

「ええ、まあ」
「ふーん」
何か言いたそうな顔。

「でも、昨日は暇でしたから」
私もこれ以上突っ込まれたくなくて、なんとなく誤魔化した。


「あれ、長谷川先生。随分早いね?」
いつも通り出勤した部長も、チラッと時計を見る。

「ええ、まあ」
余計なことは言わないのが一番と、私は受け持ち患者のカルテチェックを始めた。

その後、当直を変わった先輩ドクターも出勤し、日勤帯の勤務がスタート。
このまま黙っていれば、何の問題も起こらないはずだった。