切ないほど、愛おしい

お兄ちゃんのマンションで2日間を過ごし、私はすっかり元気になった。
普段仕事が忙しくてなかなか休みも取れないはずのお兄ちゃんが、食事の世話から洗濯まで全部してくれたお陰で体も休めたし、隠し事がなくなって精神的にも楽になった。
しかし、だからといって全ての不安がなくなったわけではない。
お兄ちゃんは今の病院を変わるか、長期の休暇を取らせたがっているし、私にはそのつもりはない。
お互いの思いは平行線のまま。

「乃恵、仕事のことだけど」
一緒にいる間に何度か言いかけたお兄ちゃん。

「ごめん、疲れたから」
そのたびに話をはぐらかし、私は部屋に逃げ込んだ。

まともに向き合えば喧嘩になりそうで、避けたかった。
結局本題に触れることもなく、出勤の朝を迎えてしまった。


朝6時。

いつもより早い時間に、私は目が覚めた。
久しぶりにお化粧をして、着替えをすませる。
鏡に映る私の顔は血色も良く、元気そのもの。
黙っていれば病み上がりと気づかれることもないだろう。

「さあ」
気合いを入れた。

リビングに出れば、きっとお兄ちゃんがいる。
たとえなんと言われても私は仕事に行くつもりだけれど、正直怖い。
でも、行くしかないんだ。

バンッ。
不安を打ち消すように、勢いよくリビングのドアを開けた。