切ないほど、愛おしい

「奥の部屋を使ってくれ」
「うん」

言われて通された部屋にはベットと布団が用意されていた。

「昨日のうちに急遽用意したから気に入らないかも知れないが、追々買い換えてやるから」
「いや、これで十分よ」

窓にはイエローのカーテンが掛けられ、小さなチェストに下着や部屋着など私のために用意されたと思われる衣服が入っている。
これだけあれば困ることはないだろう。

「とにかく、休んで体を治せ。後のことはゆっくり考えれば良い」
「うん」

お兄ちゃんの言う『ゆっくり』がいつまでなのかはわからない。
私は明日まで休んだら、明後日から仕事に復帰するつもりでいる。
でも今ここでそれを言えば喧嘩になりそうで、頷くしかなかった。

「これから何かあれば、俺に知らせろ。いいな?」

これは、徹さんには知らせずにって意味。
親友でもある徹さんに対する精一杯の牽制なんだろう。

「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」

「今回のことは私の責任だから。徹さんに無理なお願いをしたのは私だし、黙っていてほしいって言ったのも私なの。だから、」
「わかってる。これ以上徹を責めるつもりはない」
「そう」
よかった。

私のせいでお兄ちゃんと徹さんの仲がこじれたらイヤだもの。