翌朝、私はお兄ちゃんのマンションへと移った。

徹さんの部屋に比べれば狭いけれど、都心にあって2LDKのおしゃれなマンション。
兄弟のくせに今まで入ったこともなくて、私は初めて足を踏み入れた。

「随分綺麗ね」

男の人の一人暮らしにしてはきちんと片づいた部屋。
整理整頓が行き届いていて、生活感がない。
お兄ちゃんがここまでするとは思わないから、きっときれい好きの彼女がいるんだろう。

「ここは寝に帰るだけだしな」

仕事が忙しいお兄ちゃんは会社に寝泊まりすることもあるらしいし、出張だって多いからしかたない。

「そんなに忙しいのに、急に帰ってきて大丈夫なの?仕事、大変なんでしょ?」

今回の出張は明後日までの予定だって聞いていたし、急なトラブルによるもののはずだから、無理して帰ってきたんじゃないだろうか。

「バカ、お前が気にすることじゃない」
「そんな・・・」

お兄ちゃんが私のことを心配してくれているのはよくわかっている。
ありがたいとも思う。
でも、そのことが私にとって負担なんだって、お兄ちゃんは気づいていない。
心配される方も辛いのに・・・