切ないほど、愛おしい

「乃恵に泣きつかれたか?」

「まあ」
それもある。

「それでも、お前は知らせてくれるべきだったと思う」

コトンとビールをテーブルに置き、陣が俺を睨んだ。

「すまない」

テーブルに手をつき、頭を下げた。

陣の気持ちを考えれば、この怒りは当然だ。
俺には親も兄弟もいないから身内に対する特別な思いはよくわからないが、もしこれが孝太郎や一華だったらと思うと、理解できる気もする。
きっと俺なら、陣よりも激しく相手に詰め寄るだろう。



「なあ、徹」

今日はリビングのソファーで寝ると言って聞かない徹のためにブランケットを用意し、少しでも寝やすいようにと準備する俺を陣が呼んだ。

「何だ?うちのソファーはでかいから、お前でも窮屈なく寝られるぞ」

やはり、ソファーでは休まらないんだろうか?
だからって、ダブルベットとは言え陣と二人で寝る気にはならないし・・・
さすがに男一人暮らしの家に来客用の寝具なんてないから、ソファーで勘弁してもらうしかないんだが。

「寝床はソファーで十分だ。そうじゃなくて」

困った表情の陣。

「どうしたんだよ?」

乃恵ちゃんの体調が心配なんだろうか?
それとも、仕事のトラブルか?

「お前は、乃恵の事をどう思っているんだ?」

えっ?

一瞬にして、俺の周囲から音が消えた。