切ないほど、愛おしい

不機嫌そうに、不満そうに、随分悩んだ末に陣は決断した。

「わかった。今日は世話になる。俺も泊めてもらうから」

「ああ、そうしてくれ」

陣のことだから、乃恵ちゃん1人をここに泊めるなんて許すはずがないのはわかっている。

「明日には俺のマンションに連れて行くつもりだし、休んでいる間はできるだけ俺が付き添うから」

「そうか」

返事をしたものの、きっと無理をして時間を空けるつもりなんだろう。
何人かの従業員を使っているとはいえ、陣の力で回っているような会社を陣本人が何日も休めば、開店休業状態になる。
たまたま大きな仕事がなければ良いが、それによって仕事が遅れるようなことがあれば、会社の信用問題にもなりかねない。
どれだけ小さくても、会社を経営するってことはそれだけのリスクも負わなければならないんだ。
しかし、今の陣に「お前が休みなんか取って会社は大丈夫なのか?」なんて言えない。
そのことは本人が一番よくわかっていることだろうから。
ましてや俺に対しても怒っている陣に、俺の口からは絶対に言えない。

「とにかく、乃恵はもう寝ろ」
苛立ち気味に乃恵ちゃんを追いやる陣。

「はぁい」
乃恵ちゃんの方も、抵抗することもなくゲストルームへと入って行った。