切ないほど、愛おしい

「先輩、ありがとうございます」
しばらく続いた沈黙の後、やっと出てきた言葉がこれだった。

今まで厳しい事ばかり言われてきたから、余計に感動してしまった。
なのに、

「何言ってるの、私は早く辞めてくれって言っているの。鈍い子ね」
相変わらずの毒舌。

この人はいつもこうだ。
厳しいこともはっきり言うけれど、ずるいことはしないし、文句を言いながらも助けてくれる。
苦手だけれど、尊敬できる先輩。

「早く退院して復活しますから、それまで私の担当患者をお願いします」
もう一度頭を下げた。

先輩の言う通り、医者にも色々な人がいてそれぞれの働き方がある。
私にとってこの職場が、かなりハードなのも分かっている。
でももう少し、ここで頑張りたい。
一度決めたからには逃げ出したくないし、やっぱり先輩みたいな産科医を目指したいから。

「もう、わかったからおとなしくしてなさい。ほら、病室に帰るわよ」

「はい」

厳しい表情のまま背中を押され、私ば病室へと向かった、