切ないほど、愛おしい

「私が言いたいのは、人それぞれ幸せの形は違うって事よ」
「はあぁ」

普段多くを語ったり長々と説教することのない先輩にしては珍しく言いたいことがありそうな口調。
私は何を言われるのかと恐々としながら先輩を見た。

「あなただって医者になることがゴールじゃないって大学で習ったでしょ?」
「ええ」

あくまでも今はスタートで、これから一生かけてスキルを積むしかない。
それだけ責任のある仕事を選んだんだと自覚している。

「あなたにとってここはベストの環境と言えるかしら?」
「え?」

「子供が好きで小児科医になる人もいれば、個性を生かして外科医を目指す人も、精神科を選ぶ人もいる。麻酔科医や病理医はそれぞれ思惑があって仕事を選ぶし、年に数ヶ月だけ働いて後は世界を回っている人もいる。人それぞれ個性と趣向があるからそれでいいと思うのよ」
「はあ」

医者にだって色々な人がいるのは当然。
そんなことは私だって、

「あなたの病気も個性の一部でしょ?」

「・・・」
答えられなかった。

言われてみればその通りだ。
普段あれだけ患者に病状告知をしているくせに、私自身が自分の病気を受け入れられていないのかも知れない。