切ないほど、愛おしい

「あなた、山神先生が好きなんでしょ?」

「ええ、まあ」

科内の飲み会で「山神先生にあこがれて医者になりました」って漏らした記憶があるから、今さら否定は出来ない。

「そりゃあね、お金の心配も生活の心配もなくて、時間も自由に出来るならあのくらいの余裕は生まれるのかも知れないわね」
なんだか含みのある言い方。

私は意味がわからず先輩の顔を見た。

「山神先生の奥様を知ってる?」
「え、いいえ」

結婚しているって聞いたけれど、奥様のことまでは知らない。

「女優の高山凛子よ」
「えええー」

テレビでもよく見かける大物女優じゃない。
知らなかった。そんな有名人が先生の奥さんなんて。
でも待って、高山凛子って40代後半のはずじゃあ・・・

「10歳以上年上の奥様。結婚して10年くらいにはなるはずだけれど、当時は騒がれたのよ。初婚で20代の医者と離婚歴のある大物情優の結婚だものそうとうの決心よね」
「でしょうね」
私に別世界の話しに聞こえる。

「まあお陰で、お金の心配も生活の心配もなく、忙しい奥様に気を遣うこともなく自由気ままに生きられるんだからそれはそれで幸せなのかもね」
「はあぁ」

そうだろうか。
そんな生き方って幸せと言えるのかなあ?
少なくとも私には理解できない。