切ないほど、愛おしい

「患者の方が似合っているわね」
睨み付けるように私を見る先輩は、間違いなく怒っている。

「申し訳ありません」

「建康でない人間が医者になるべきではないと、私は思うわ」

「本当に」
「そう思うなら、善処しなさい。仕事は慈善事業ではないの」

「すみません」

馬場先生は150センチ足らずの小さな体に似合わずパワフルな女性。
外来でも病棟でもいつも走り回っていて、座って休む姿を見たことがないくらい。
仕事も人一倍早くて正確で、自分にも他人にも厳しい完全無欠の女医。
そのさっぱりとした性格のせいか、患者さんにも人気がある。

私だって、先輩みたいな女医になりたかった。

クスン。
泣きたくなんてないのに、目の前の景色が霞む。

「泣かないでよ。私がいじめているみたいに見えるから」

「大丈夫です」

こんな事では泣かない。
苦労して無理を続けてやっと医者になれたんだから、諦めたりなんてしない。

「辞めるなら早く決心しなさい。ズルズルされても迷惑なだけだし。もし、まだここでの勤務を続けるのならちゃんと自己管理をしなさい。今日みたいな呼び出しは2度とごめんだからね」

「はい」

私は言い返す言葉もなく、深く頭を下げた。