「…………んっ」



うっすら開く視界は白い天井。ほんのり消毒薬の香り。



「気がついた?」



声がする方に顔を向ける。
ああ、イケメンだ。



「申し訳ありません岸先輩。しっかり元気に出社したばずなんですが…………」
「いや、人間は機械じゃない。完全は無いから」



ベッドの脇の椅子に足を組み、にこりと笑っていらっしゃる。



「今日は無理せず帰るといい」
「いえ、初日ですしそんなわけには……」
「君は初日から会社の役に立てるのか?」
「えっ?」


「顔合わせ位がせいぜいだろ。なにも期待していないから帰れ」



突きつけられた現実と上司の辛辣な言葉に目覚めてから覚醒したての脳ミソに言葉が突き刺さった。




ーあぁ……そうか…ー




入社初日からこんなふうにぶっ倒れた新人はすでにケチがついたということか。
まず……つまりお荷物の役立たず。




「申し訳……あり…ません」





声が震えた。ホロッと涙が出た。





「かえ…り……ま…ず」





情けないやら悔しいやらのぐちゃぐちゃな頭でなにも考えられなくなって、なんとか声を絞り出してベッドから抜け出した。





ーやらかした…ー




それしか考えられなかった。





心臓は弾けんばかりに脈打ってるし、涙は果てしなく流れ出てくるし、手足は震えが止まらないしなにがなんだかわからないけど、この上司が言う通り早く居なくならないと。


そう、居残ってもなにも役に立たない。
当たり前だ。
挨拶しかしていない、なにも教わっていない役立たず………



ベチャッ! 





「いだっ……!!」




震える足でベッドから降りたもんだから盛大に……




顔から床にダイブした。