「白井音恵です。よろしくお願いします!!」
「しろい?……おとめ?」
「……、くそっ」




のっけから?
けんか……喧嘩売ってきた?いやいや、まぁまぁ。上司だしな?こ、これから組むわけだしな?



スーハー。
スー……………………………ハー………………ゴホゴホ!


「風邪かな?体調管理どうしてた?」
「……いや、大丈夫です。健康です」
「ならいいけど。鼻、やられたらうちの仕事無理だから」



そう。私が憧れて恋い焦がれ、頑張って頑張ってやっと内定貰えた憧れの会社。
MIRROR・FLOWER。香水の企画販売の会社である。
我が家は両親がまぁ…夜の仕事をしていたから小さい頃からいろんな人種、けふん……様々な嗜好の方とお会いする機会がありまして。
思い返せば幼きある日、来るべくして訪れた雷に打たれたようなターニングポイントにあったのである。


「ふあああぁ………!!」


それは幼い頃、母の仕事にこびりついていた時だった。


「いいにおい!!」


むちゃくそ綺麗な背が高ーいおねいさんが、めっさえ~ぇ香りを漂わせていた。
お花?果物?なに?嗅いだこと無いけど…
なにこれ!!
やっと寒くなくなって、はぁ暖かいな気持ちいいな~…のときにふと感じる、なにこのいい匂い。落ち着くし包まれてるみたいにフワフワいい気持ち。これに包まれてた~い。
あ!この香りのおかげ!?
的な。


そんなビビビッ!!って感覚を感じたのが最初。
その後も、この人は……おねぃさん?的な人から、おにぃさん?的な人も居たけど。
でも香りの種は多少違えどやっぱりえ~ぇ香りがするのだ。
さらに父に連れられた先も驚愕だった。

おにぃさんから年齢的に父よりだいぶ上のおにぃさん?まで多種多様のえ~ぇ香り…
春の日溜まりでぬくぬく抱いてたらほっとお昼寝しちゃいそうな香りや、暑くて逃げ出したくなる時にふーっと涼しい果実を食めたような気持ちにさせてくれる香り。
はたまた、木々に囲まれて安らぎと安心感をあたえて守ってくれるようなそんな香りもあるし……ふしぎ、とっても不思議!!


そんな摩訶不思議を追求したくて天職ダ!と今に至る。
その筋の最先端の会社にやっと入社でき、本日わくわくの初日。
紹介された直属の上司からの一言。


まぁ……正直、最悪だよね。