「相当なやり手ねぇ……」

何か考え込む神崎さん。しかし、そうなったのも
 結局は、俺の不注意からだ。
瀬戸さんの頭に包帯をしているのを見ると
申し訳ない気持ちになった。
 罪悪感を持ちながら俺は、頭を下げた。

「あの……すみませんでした。
 俺が、もっと気をつけていれば瀬戸さんが
怪我をしなくて済んでいたのに……」

「あ、いや……立花君のせいじゃないよ。
 柔道とかやっていたのに背後に気づかなかった
自分も悪いんだし。それよりも君が無事で良かったよ」

 瀬戸さん……。
自分が怪我したのにニコッと笑顔で心配してくれた
 瀬戸さんに申し訳ないと思いながらも嬉しかった。
すると彼は、神崎さんを見る。

「それより……あの井戸慶一は、遺体で
発見されたようですね?仕事場から連絡がありました。
 しかも頭を狙って撃ち殺し、そばに赤薔薇があったとか」

「……そうらしいな。死体に赤薔薇を置いて行くのは、
アイツらの習性だからな」

 頭を狙って撃ち殺した……。
考えただけでもゾッとした。本当に
 邪魔になったら殺す殺人組織らしいやり方だと思った。

「それで他には、情報は分かったのか?」

「いえ……赤薔薇との関係性は何も。しかし
井戸慶一については、いくつか分かりました。
 彼の本当の素性は、母親と2人で暮らしていたらしいです。
収入が少なく貧しいため相当お金に苦労したみたいですね。
 しかし顔と要領がいいため女性を上手く騙して貢がせて
生活をしていた。だが、ただその1人の母親が
病で倒れて手術代が必要になり大金を必要に。
 多分そこで赤薔薇会につけ込まれたんだろうって」

瀬戸さんの説明に俺は、ビクッと反応した。
 母親と2人暮らしで……病気に!?
じゃあ、チラッと佐々木慶一が言ったことは、
本当のことだったんだ?

まさか、本当に母親が病で苦しんでいたなんて……。
 俺は、動揺してしまった。
神崎さんは、なるほどと言った表情をしながら
ため息を吐いていた。

「アイツらは、人の弱味につけ込むのも上手いからな。
  またその手の犯罪は、増えるかもしれん。
くれぐれも気をつけるように言っておいてくれ。
立花。行くぞ!」

「あ、はい」