ミキさんは、慌てて厨房の方に引っ込んでしまった。
すると篠田がソファーから立ち上がった。
 「ちょっと便所に行ってくる」と言いながら
俺は、それに篠田に気をとられていると
神崎さんは、俺にこっそりと話しかけてきた。

「立花、篠田の後を追え。早く」

 えっ……?
神崎さんの方を見ると顔で合図をされた。
 意味が分からなかったが言われた通りに慌てて
篠田を追いかけた。

 するとタオルを持ってきたミキさんと
篠田がすれ違う。俺は、隠れて見ていると
すれ違い際にミキさんは、篠田に何かを渡していた。
 一瞬だったが何か金属製の物に見えた。
あれは……何だ?

 ハッ!!それよりもミキさんが!?
まさか……篠田と繋がりがあるのは、
 マヤさんではなくてミキさんの方だったのか?
それじゃあ……あれは、カモフラージュ?

 意外な真実に俺は、驚いてしまった。
あ、だから神崎さんは、ミキさんを指名したのか?
 もしかしたらすでに気づいていたのだろうか。

その後は、ミキさんは、何食わぬ顔をして
 神崎さんにタオルを渡していた。
篠田も同じようにトイレから戻ると変わらず
 マヤさんにべったりだった。これは一体?

俺は、バイトが終わると慌てて神崎さんに
 テレビ電話をした。神崎さんは、篠田が帰ると
そのまま帰って行った。

「神崎さん。俺見ました!
 ミキさんが篠田に何か金属みたいな物を渡していました」

「……やはりな。立花。今すぐ喫茶店に来い。
お前に真相を教えてやる」

「えっ?真相……?」

 じゃあ、分かったんだ!
このややこしいトリックが……。
 俺は、当てて駅まで走る。そして
神崎さんの経営する喫茶店に向かった。

 着くと閉店した店の中に入る。
電気は、ついている。すると神崎さんが出てきた。
 背広とベストは、脱いでネクタイは、外していた。

「こっちに来い」

「は、はい」