「あれ?何で神崎さんが……ここに?」
記憶が、ぼんやりして曖昧だった。
すると神崎さんは、何も言わずに俺のところに駆け寄り
何も言わずに抱き締めてきた。えっ……えぇっ!?
何で男の神崎さんに抱き締められているのか分からず
動揺してしまう。しかもドキドキまでしてしまった。
「あ、あの……?」
「良かった……記憶が戻ったんだな?」
えっ?記憶……?
その瞬間、今まで記憶を思い出した。俺……。
申し訳なくて慌てて押し退ける。
「あの……神崎さん。すみませんでした。
俺……薬のせいで神崎さんを……それに」
不可抗力だとしても怪我をさせたのは事実だ。
もしかしたら死んでいたかもしれない。
それだけじゃない……自分が赤羽の血を引いている。
神崎さんが憎む赤羽の血を……。
どうしたら謝罪が出来るのか分からず
胸が苦しくなり涙が溢れてくる。
しかし神崎さんは、そんな俺の頭を撫でてくれた。
えっ……?驚いて神崎さんを見ると切なそうだが
優しく微笑んでくれていた。
「立花。俺は、確かに赤薔薇会を憎んでいる。
それは、紛れもなく事実だ。リカコに調べさせて
お前の存在にたどり着いた時は、確かにお前に
憎しみを覚えたし……赤羽もお前を捜していた。
だから上手く利用すればアイツから近づいてくると思い
お前をバイトとして入れた」
やっぱり……。
赤羽の言っていた通りだった。
分かっていても本人から事実を聞かされると
どうしようもなく悲しい気持ちになった。
「だが……それは、最初の内だけだ。
お前と一緒に捜査したり喫茶店で過ごしている内に
昔を思い出した。
よく伊波と一緒に過ごしてた時間を……。
知らない内にお前との時間が当たり前になり
大切な時間になっていた」
「神崎……さん」
「俺は、お前を赤薔薇会に渡す気はない。
これからもずっと……俺のバディとして一緒に居たい。
それは、間違いなく俺の本心だ。
血とか過去とか関係なく……お前を守りたい。
それじゃあ……ダメか?お前と一緒に居る理由は……」
真っ直ぐと俺を見て言ってくれた。
その優しくも切ない言葉に俺は、さらに涙が溢れていた。



