浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~


「いいから。俺のことは、放っておいて逃げろ。
 お前は、俺が絶対に守ってやる!!」

「……かんざき……さん」

 何故だろうか?その言葉に涙が出てきた。
あれ……似たような光景……何処かで見たことがある?
 少しずつ霧になっていた記憶が蘇っていく。
俺は……。

「立花……行け!!」

 俺は、立ち上がるとそのまま体育倉庫から出て行く。
逃げている訳ではない。あの仮面の男を追いかけに。
 どうしてなのか、まだ記憶が曖昧だが
そうしないといけない気がした。

 だって……俺……。
廊下を走っているとあの仮面の男を見つけた。
 すでに外に居ていた。岸谷ほのかは、気絶させられ
大男に抱きかかえられていた。

「待て。その子を返せ!!」

 俺は、必死に大声で叫んだ。すると
仮面の男は、俺に気付き振り返ってきた。

「おや?君が追いかけてきたか。
もしかして記憶でも戻ったかな?」

「違う……でもそうしないといけない気がして。
とにかくその子を返せ。彼女は、俺の生徒だ!」

 まだ曖昧な記憶。でもそうしないといけない気がした。
 そうしないと……あの人に顔向けが出来ないと。
思い浮かぶのは、神崎って人だった。
 どうしてか分からないけど……嫌われたくないと思った。

 すると仮面の男は、クスッと笑ってきた。
そしてお面に手をかける。

「どうやら……まだ記憶が曖昧のようだね。
 記憶喪失の君を上手く利用するのも悪くないと思ったが
やはり中途半端のせいか、そろそろ飽きたよ。
 仕方がない。僕が手伝ってあげよう」

 彼は、そう言うと仮面を外した。
俺は、その素顔に衝撃を受ける。な、何で!?
 仮面の男の正体は、伊波君だったからだ。